【III.-6.】 糖尿病性網膜症(3)――進行のプロセス
糖尿病性網膜症は、その進行のプロセスを幾つかの局面に分類することができます。症状初期、すなわち網膜の血流が変調を来し始める局面は、【単純網膜症】と呼ばれます。【毛細血管瘤】・【点状・斑状出血】・【硬性白斑】(【血漿】が滲み出たもの)が現れますが、実質的には、まだ「症状」とは呼ぶ前の段階です。
血流がいよいよ悪くなってくると、網膜内に【虚血】部位が生じます。つまり、血管が閉塞して網膜の毛細血管網の隅々に行渡らなくなっている状態です。この【増殖前網膜症】においては、【軟性白斑】(虚血部位の細胞が変質したもの)・(完全な)【血管閉塞】・【静脈異常】(静脈の腫れ)・【網膜浮腫】がみられるようになります。【増殖前網膜症】もまた、顕著な症状とはまだいい難いものです。ただし、網膜のなかでも、最も視力鋭敏な部分である【黄斑部】に浮腫ができると、深刻な視力低下をもたらします。
続く局面が、【増殖網膜症】です。虚血部位において不足する酸素や栄養素を補うため、血管が新しく生まれるのがこの局面です。しかしながら、新しく生まれた血管は破れやすく、【網膜】や【硝子体】で出血を広げてしまうことがあります。こうなると、視力に深刻な被害が出てきます。また、破れた血管から出る成分で【増殖膜】が形成されます。【増殖膜】が大きくなると、網膜を引っ張って【網膜剥離】をもたらします。この段階にはおいては、視力低下の他に、【飛蚊症】が起こることもあります。【飛蚊症】とは、【硝子体】に「浮遊性の混濁を生ずる時、その混濁が網膜に映じて眼前に蚊が飛ぶように見える現象」『広辞苑第五版』です。一方で、この段階でも出血や網膜剥離が起きてなければ、目立った症状が出ることはありません。
以上のように、網膜症を悪化させる条件を取り揃えているのが糖尿病であるといえましょう。また、自覚症状が現れにくいということについても上記のとおりです。治療には、血糖値管理と並んで、虚血部位のレーザー治療や硝子体手術が講じられますが、再発の可能性が十分にある疾患です。事前の健診・事後の治療が求めらることはいうまでもありません。
